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充電器イラスト【 iphone・Android・Macなど何でも対応 】

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《 #DAYSTORY:002 》「 みんなちがって、みんないいって、みんないう。」




「みんなちがって、みんないい。この言葉ほど、私は殺意を覚えたことはない」
 
 
最近読んだ本の話をしていたはずなのに、どうしてこうなったのか。気付けば女性はベッドから起き上がり、キッとした目つきをこちらに向けてきた。




「”みんなちがってみんないい”だなんて、所詮は恵まれている人の言葉なのよ。恵まれている人が、恵まれていない人たちを直視したくないがために、言い訳として使っているに過ぎないわ」



女性はそう言って、充電器に繋がれている携帯電話へと手を伸ばした。手首に繋がれた点滴が、女性の手を付きまとう。点滴の管と充電器の管が少し絡まり、女性は不愉快な顔を見せた。



女性の名は知佳(チカ)さんといった。僕がこの病院に入院したときに知り合ってから、もうすぐで5年ほどの付き合いになる。入院中はやることもなく退屈なので、よくチカさんからおすすめの本や映画を教えてもらっていた。それらを観るたびに、こうしてチカさんの部屋で話をするのが入院中の暇つぶしでもあった。僕が4年前に退院したことを除けば、他はなにひとつ変わらない。




「この前、ここで仲良くなった車椅子の男の子が言ってたわよ。歩けたり走れたりするのが羨ましい。僕も一度でいいから走ってみたい、って。じゃあ逆に、その子の友達は車椅子で生活してみたいと思う? 思わないでしょ。だから所詮、”みんなちがってみんないい”なんて恵まれている人の言葉なのよ。私たちは、みんなとおなじをずっと夢見てるんだから」




チカさんは、15歳の頃からずっと病院で生活しているらしかった。いわゆる「難病」というやつで、約10年間、病院の外で自由にできたことはないと言っていた。その話を聞いたと同時に、その代わりに病院内のことなら看護婦さんより私の方が長いから私に聞きなさい、と強がりも口にした。彼女にとって強がることは、弱さに押し潰されないための防衛本能のように思えた。




「それに、”みんなちがってみんないい”って、最近はみんな言うじゃない。数多くの人から発せられる言葉ほど薄っぺらいものはないわ。言葉は、誰が言うかが大事なんだから。金子みすゞが言うから良いのよあ、あの言葉は」



チカさんが言うに、金子みすゞは幼少期に父を亡くしたり、それなりに大変な人生を送ってきているらしかった。事実、彼女は26歳という若さで自ら命を絶っている。今のチカさんの年齢だな、と気付いたのは後のことだ。




「ま、そんなことにも もう慣れたけどね。いくら文句を言ったって、私は私なんだし。人間はあれだね、慣れると丸くなるもんだ」




「みんなとおなじになっても、チカさんはチカさんだ。病気があろうがなかろうが、チカさんなことには変わりないよ」
月並みな言葉しか掛けれない自分にも、もう慣れていた。
 

 

「違いといえばね、この前隣の病室のおばあちゃんがいいこと言ってたんだ」
そんな月並みの言葉を聞くのもチカさんは慣れたのか、少し間を置いてまた話し出した。



「違いはね、違いのままほうっておくんだよ。相手のも、自分のも。違いは違いのままでいいの。決してそれを、”間違い”にしちゃあいけないよ。違いを”間違い”にしてしまったら、相手も自分も否定することになるからね」
チカさんはおばあさんの話し方を真似ながら、そう言った。




「それを聞いてね、ほんのちょっとだけ嬉しかったんだ。私の人生は他人と違うかもしれないけど、間違ってはいないのかなあ、って。私の人生を間違いにしていたのは、私自身だったのかもしれないね」



チカさんのその言動には、死を目前とした人間が人生をゆっくりと振り返ったかのような迫力があった。
気付けば 前に伸びている道よりも、後ろの歩んできた道のりの方が長くなってしまった、そんな切なささえ漂っている。




「金子みすゞも、そんなことを言いたかったのかな。彼女がこの場であの詩を書いていたら、もう一文増えていたかもしれない。みんなちがってみんないい。そして、チカは間違っていない」


そう言ってチカさんは、切なさを吹き飛ばすかのようにニッコリと笑った。なんてことのない、いつもの強がりだった。




「そうかもしれない」
本当に、そうかもしれないと思う。



「それに、みんながチカさんと同じだったら、病院がうるさくって大変だ」


僕もチカさんがするみたいに、ニッコリと強がってみせた。







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「みんなちがって、みんないいって、みんないう」



違いは違いのまま、ほうっておくこと。
 
ほうっておくと、違いを尊敬できる。違いを遊べる。違いに光をあてることができる。


違うことを恐れる必要も、羨ましく思う必要もない。
無邪気なこどものように、違いで遊ぶ。
 
 
 
だからこそ、みんなちがって、みんないい。



*


みんな持ってる充電器に描くことで、”違い”をたのしむ。あそぶ。


マスキングテープを貼ったりするのはちょっと見栄えが…
イラストなら、おしゃれに違いをたのしめます。




他にも、こんなものに描いて欲しい!などの声も募集しております。
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