気分めくりカレンダー2018
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《 #DAYSTORY:001 》「きょうのきぶん、きょうのじぶん」
[ ある日 ]
なんとなく、あくまでなんとなくだが、日記とやらを始めてみようと思う。
というのも、僕がこうして日記を書く羽目になったのは、一緒に暮らしている彼女のせいである。
彼女と同じ時間を過ごすようになって、気付けば1年経つ。
一人で晩酌をしながら吐露していた仕事の愚痴も、今やふたりごとのメインテーマだ。
彼女と過ごすようになって、特段変わったことはないように思える。
2人いるからといって、同じものを2つ買うこともない。1つのものを2人で分ければ済む。
歯ブラシとコンタクトケースは2つになったけど。
変わったことといえば、彼女くらいだ。
というよりも、彼女自身が変わっている。
僕がこうして日記を書く羽目になったのも、簡潔に言うと彼女が変わっているからだ。
今日は起きるなりすぐ、音楽をかけたと思いきや、服も着ないまま踊り出した。
歌の歌詞なのか、それとも何かの映画のセリフなのか、何やら踊りながら口ずさんでいる。いつもの部屋の風景に飽き飽きして、ここがコンサートホールにでも見えているのかもしれない。
眠くて布団から出ない僕も、気付けばミュージカルに強制出演させられる。
起きたらカレンダーをめくるのが僕の日課で、それをしないと僕の1日が始まらないのだが、僕が今日を始めるより先に、彼女と僕と部屋のインテリアたちによるミュージカルが始まった。
そんな彼女の変わった生態を、この日記には綴っていこうと思う。
ただ、彼女がきっかけというのは少し癪なので、あくまでもなんとなく始めたことにする。
[ とある日 ]
「やらなきゃいけなーい、でもやりたくなーい、やらなきゃいけなーい、でもやりたくなーい」
通訳すると、どうやら今日は何にもしたくない日らしい。でも、やることはたくさん溜まっているらしい。
少女が花占いをするかのように、彼女は今日を占っていた。
「やらなきゃいけなーい、でもやりたくなーい…」
占いが終わったのか、声が止み沈黙が流れた。と思うと今度は唐突に、僕の方へ走ってきた。狭い部屋だというのに。
「ねえねえ、今日のおひるごはんナポリタンつくって」
「別にいいけど、どうして?」
「なんにもやりたくない日は、先にごほうびを決めるの」
彼女はそう言って、自分の部屋でせっせと仕事の用意をし始めた。
まさか、お昼ご飯を作るのが面倒なのでやりたくない、などとは言い出せるわけもない。
[ さらにとある日 ]
先述しておくと、僕らは調味料や食材に少しばかり気を使っている。
出来るだけ国産のものを食べたり、無農薬や化学調味料を使っていないものを買ったり。
「今日という今日は、オーガニックなどくそくらえだ!」
仕事から帰るなり、彼女はそう言った。とりわけ彼女は、親をオーガニックに殺されたわけではない。
「さんざんくいちらかし、のみちらかして、〆は豚骨バリカタラーメンだ!」
そうして彼女は家に帰ってきてすぐ、家を出て外食に行く用意をし始めた。
僕の給料日が今日って、教えていないはずなのになあ。
*
彼女に聞いたことがある。
「どうしてそう毎日毎日、人が違うかのように生きれるんだい?」
「だって自分の気分なんて、自分ですらコントロールできないでしょ。それなら、とことん気分に振り回されたらいいじゃない。同じ毎日だなんて、わたしつまらないもの」
おどる。うたう。なく。とぼける。はなしかける。
そんな彼女を見ていて、ただただ愛おしいと思う。
来る日も来る日も、彼女は違う顔を見せてくれる。
別に彼女は僕のために見せてくれている訳ではないので、見せてくれるというと実は少し違うのだが。
毎日違う気分で、毎日違う自分で生きてもいいのかもしれない。
まだ眠りから覚めない彼女を横目に、僕は今日もカレンダーをめくる。
*
「 きょうのきぶん、きょうのじぶん 」
暦を刻むカレンダーではなく、気分を彩るカレンダー。
その日の気分で左右されることって、意外とたくさんありませんか?
毎朝カレンダーをめくるように、自分の気分を昨日から今日にめくる。
新しい自分で、新しい今日を生きましょう。
*
《 きょうのきぶん 》
① 「うたいたい きぶん」
② 「やりたくない。しんどい。」
③ 「だいすき、ちゅっ」
④ 「さみしい。だから、あいにいく。」
⑤ 「だれもわるくない」
⑥ 「なんでもないひ」
⑦ 「オーガニックなんてくそくらえ」
⑧ 「おてがみをかこう」
⑨ 「ひとりになりたい」
⑩ 「ないものねだり」
※本作品はカレンダーではありません。日月は記載されていませんのであらかじめご了承ください。
※ご予約はコメント、メッセージでも可能です。お気軽にご連絡ください。
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